歯周病

歯周病とは

歯周病は進行すると怖い病気

歯周病とは、歯周病原菌によって引き起こされる感染症で、歯の周囲の歯肉や骨などに病原菌が感染し炎症を起こし、歯を支えている組織を破壊していく病気です。
歯周病と言っても、程度によって症状は大きく異なります。
初期では「歯肉炎」といわれ、その段階では歯の周囲の歯肉が炎症を起こして少し腫れたり、歯を磨くと血が出る程度ですが、進行して「重度の歯周炎」になると、炎症は歯肉だけにとどまらず、その奥にある歯の周囲の靭帯や骨をも破壊して、歯の存在自体を脅かしていきます。

歯周病は進行すると歯を失うことになるため、それだけでも十分怖い病気です。
しかし、歯周病の怖さは実はそれだけではありません。
歯周病原菌は歯肉の毛細血管から侵入して、血管を通って身体中に広がっていきます。
口の中の病原菌が、歯ぐきの処置後約90秒後に、右腕の静脈から出てきたという実験データがあるほどです。
つまり、歯周病は全身的な病気と深い関わりがある、命に関わる可能性があるということです。
例えば次のような病気との関連が報告されています。

心臓疾患・脳梗塞
血菅の中に入り込んだ歯周病原菌の影響により血管の中に血栓を作り、それが元で心筋梗塞や狭心症のような心臓疾患や脳梗塞を起こしやすくなります。
糖尿病
糖尿病と歯周病との関連は深く、糖尿病の人は歯周病が重症化しやすいと同時に、歯周病が原因で糖尿病を起こしやすくなることもわかっています。
現在糖尿病学会では、糖尿病と診断された、あるいは糖尿病予備軍の方にはまず、歯科で歯周病の検査、治療をするように勧めています。
実際、歯周病の治療を行うと血糖値が安定するということが多く報告されています。
誤嚥性肺炎
加齢、老化現象により舌や口腔筋の反射機能が落ちると、唾液と一緒に口の中の歯周病菌を肺の中へ飲み込んでしまい、肺炎を起こして非常に危険な状態になり、死に至ることがあります。
早産・低体重児出産
妊娠すると歯周病になりやすくなります。
それは、女性ホルモンが大きく関わってくるといわれており、特にエストロゲンという女性ホルモンがある種の歯周病原細菌の増殖を促すこと、また、歯肉を形作る細胞がそのエストロゲンの標的となり歯肉が悪化していき、歯周病が悪化していきます。
中等度、重度の歯周病にかかっている妊婦は早産や低体重児出産を起こしやすくなることがわかっています。
その危険度は、タバコやアルコールによるリスクよりも7倍高いとされています。
消化器系疾患
歯周病原細菌の中はピロリ菌と共通する抗原(菌体の一部分)を持っているものがあり、胃炎や、胃潰瘍、胃がんの原因となる可能性があります。
関節リウマチ
歯周病原細菌が血管を通って関節の内部へ入り込み、炎症を起こして関節リウマチを引き起こす可能性があります。
人工関節を入れている人が歯周病になると、人工関節の周りに歯周病原細菌が病巣を作って炎症が起こり、人工関節を取り除かなくてはいけなくなります。

歯を失う原因のトップは歯周病

2018年11月「第2回永久歯の抜歯原因調査報告書」(財)8020推進財団調べ

  1. 歯周病(37.1%)
  2. むし歯(29.2%)
  3. 歯根破折(17.8%)
  4. その他(7.6%)
  5. 埋伏歯(親知らず)(5.0%)
  6. 矯正治療のため(1.9%)

現在ではよく知られていますが、国民の成人のほとんど(8割)が歯周病にかかっている、またはその予備軍だと言われており、統計学的にも、歯を失う原因のトップはこの歯周病が占めています。歯周病を引き起こす細菌は複数確認されており、歯周病を起こしている主な細菌がどの細菌かによっても歯周病の進行の仕方や病状が異なってきます。
多くの人がかかるタイプの歯周病は慢性辺縁性歯周炎というもので、20代〜40代くらいに多く発症し、ゆっくり進行していきます。
中には10代から発症して急速に重症化するタイプの歯周病も存在し、あっという間に歯を失ってしまう急速進行性歯周病というものもあります。
そういうことから考えても、歯周病の予防は成人からではなく、小児のうちからすることが大切です。

歯周病は生活習慣病

歯周病は歯周病原菌による感染症ですが、歯周病菌を口の中に持っているからといって必ずしも歯周病を発症するとは限りません。
歯周病を発症させる直接の原因は、歯と歯ぐきの周囲にたまった細菌の塊(歯垢、プラーク、バイオフィルムというタンパク質で覆われた塊)から出る毒素ですが、その他にも

  • 喫煙
  • 精神的、肉体的ストレス
  • 不適切な詰め物、不適合な冠や入れ歯
  • 歯ぎしり、くいしばり、かみしめ
  • 不規則や偏った食生活
  • 悪いかみ合わせ、歯並び
  • 妊娠
  • 肥満、メタボリックシンドローム
  • 糖尿病、骨粗鬆症、ホルモン異常に代表される全身疾患などの因子
  • 薬の長期服用

が絡み合って歯周病を発症させます。
このように歯周病は生活習慣病の要素にも大きく影響される病気です。
自分の努力や心がけ次第では、重症化することを防ぐことも十分可能な病気です。

歯周病の症状は(ポケットの深さなど)

歯周病の進行の程度は、歯と歯ぐきの間に存在する溝(歯周ポケット)の深さを測定し、軽度(歯肉炎)、中程度、重度というように分類していきます。

軽度(歯周ポケット3ミリ以下)

この段階の歯周病は「歯肉炎」と呼ばれ、まだ周囲の骨の破壊は見られません。ブラッシングで歯ぐきから血が出たり、歯ぐきが赤く丸みを帯びて腫れてきます。
むず痒いというような症状が起こりブラッシング不足になりやすくなり、更に歯垢がたまり悪化します。

中程度(歯周ポケット3〜6ミリ)

歯肉炎から悪化すると「歯周炎」へと移行し、骨の破壊が始まります。
そのため、歯周ポケットがだんだんと深くなってきます。
また、骨が吸収されて下がるため、歯ぐきも下がって歯根が露出し、冷たいものがしみやすくなったり、むし歯になりやすくなってきます。また歯ぐきが下がることで、歯と歯の間にすき間が空いてきて食べ物が詰まりやすくなったり、歯並びが狂ってくる症状も起こってきます。

重度(歯周ポケット6ミリ以上)

骨はさらに破壊が進行し、歯がぐらぐら動くようになってきます。歯ぐきは時々膿をためて腫れてくるようになります。ブラッシングしても出血や膿が出て強い痛みを出すことがあり、口臭もひどくなってきます。ぐらつきがひどくなると咬むことができなくなり、食事に支障が出てきます。
気がつくと抜け落ちてしまうことがあります。

歯周病のそれぞれの治療法は?

軽度

歯肉炎の状態であれば、歯のブラッシングをしっかり行うことで治る場合がほとんどです。
腫れた歯ぐきは毎日のブラッシングで良くなっていきますが、固くこびりついた歯垢(プラーク、バイオフィルム)や歯石はブラッシングでは取れません。
歯垢や歯石がついている場合がほとんどなので、歯科医院で歯垢と歯石除去をしてもらう必要があります。

中程度

歯周ポケットの中に歯垢や歯石が溜まっていて、自分では取り除くことができないため、歯科医院で専用の器具を用いて、歯周ポケット内の歯垢や歯石を取り除きます。
深いポケットの場合は、麻酔をして処置する必要があります。

重度

歯周ポケットがかなり深くなるため、専用の器具を使っても通常の基本的な治療では完全に歯石を取り除くのが難しくなってきます。
基本的な治療でもポケットの深さが改善されず、ポケット内で細菌が増殖し、ブラッシングではどうしても除去できない状態や、歯周病の進行が止められない状態に対しては、外科的にポケットの深さを減少させます。
歯ぐきを切開し、歯槽骨を露出させて手術を行います。
近年では、特殊な材料を用いて部分的に失われた骨であれば、骨を再生させられる手術(再生療法)を行う場合もあります。手術はそれぞれの病態にあった方法が適応されます。
進行しすぎて歯のぐらつきがひどい場合には抜歯になります。

歯周病とむし歯の違いは

原因菌が違う

歯周病とむし歯はどちらも細菌によって引き起こされますが、それぞれ原因となる細菌は全く異なります。

破壊される場所が違う

歯周病は歯を支えている歯茎や骨などの組織がだんだんと破壊されていきますが、歯自体は破壊されることはありません。
一方むし歯は歯の質自体が、むし歯菌の出す酸によって溶かされ、徐々に破壊されていきます。

かかりやすい年齢層が違う

歯周病の場合、軽度の歯肉炎であれば、ブラッシング不足の子供たちでもよく起こりますが、骨の破壊を伴う本格的な歯周病は30代〜40代くらいからかかり始める人が多いです。
ただし、近年、食生活の変化もあり、若年者の歯周病が増加している傾向にあります。

痛みの出方が違う

むし歯は進行するにつれて、中の神経に近づいていきます。そのため、穴が深くなっていくと徐々に冷たいものや熱いものでしみたり、甘いものを食べるとジーンとする、というような痛みが出てきます。
それに対し、歯周病は骨の破壊が起こっても痛みを出すことがほとんどなく、気がついたら歯がグラグラになってびっくりするということが多いものです。

進行の仕方が違う

むし歯は一歯単位で進行していくのに対し、歯周病の場合は一歯単位の場合もあれば、全体的に病状が進行する場合があります。
一気に歯が何歯もぐらついてきて数本同時に失う、ということも少なくありません。
そのため、歯を失うショックは歯周病の場合が大きいです。

歯周病に関して気をつけること

歯周病はサイレントディジーズ(静かに進行する病気)とよく呼ばれます。
これは痛みなどの症状をほとんど出さずに進行していくことが多いためです。
特に、小さい頃からむし歯にかかったことがなく、ほとんど歯医者のお世話にもなったことがないというのが自慢だ、という人ほど歯周病が進行してしまっていることがあり要注意です。
むし歯と歯周病は全く別ものであり、むし歯にかかったことがないからといって歯周病にかからない、ということでは全くありません。
歯周病は放置しておいて進行すると怖い病気ですが、早いうちからきちんと対処、予防していけば発症させない、または進行させないようにすることが十分可能な病気でもあります。
全身の健康を守るためにも、ぜひ定期的に歯科医院に検診やメインテナンスで通院し、歯周病ケアを しっかりと行っていきましょう。